朝、すれ違った人に挨拶をした。
返事はなかった。
聞こえなかったのかもしれない。
忙しかったのかもしれない。
それでも、少しだけ胸に残った。
自分はここにいないことになっているのか、と。
挨拶が返ってこなかった朝
挨拶は、人として基本的なことだと思っている。
だからこそ、返ってこないと、思った以上に引っかかる。
大きな出来事じゃない。
誰かに怒鳴られたわけでも、仕事を邪魔されたわけでもない。
ただ、こちらが声をかけて、何も返ってこなかった。
それだけで、存在を認識されていないような気持ちになった。
人は、小さなことを覚えている。
された側は、特に。
──この朝のことを思い出したのは、ある本を聴いていたときだった。
好かれる努力より、嫌われることをしない
永松茂久さんの『リーダーは話し方が9割』を、オーディオブックで聴いた。
周りから好かれるには、どうすればいいか。
相手の好きなものを見つける。共通点を探す。
そういう方法を想像していた。
でも、本が大事にしていたのは、もっと手前のことだった。
相手が嫌がることを、しない。
足し算ではなく、引き算の考え方だ。
好かれようとする努力は、相手に合わせる工夫がいる。
空回りすることもある。
嫌われることをしない努力は、自分の振る舞いを点検するだけでいい。
地味だけど、毎日続けられる。
──振り返ると、俺にも、やめたことがあった。
「これ、やっといて」をやめた
昔の俺は、人に仕事を頼むとき、言い方が強かった。
「これ、やってください」
一方的に頼んで、それで終わり。
相手に余裕があるかどうか、確かめもしなかった。
ある時、逆の立場になって気づいた。
自分の仕事を抱えている中で、突然「これやっといて」と言われる。
できるかどうかも聞かれないまま、決まったことのように渡される。
なんで、と思った。
納得がいかなかった。
それからは、頼み方を変えた。
「これ、お願いできませんか」
指示ではなく、伺う形にする。
よほどのことでない限り、相手が断れる余地も残しておく。
ただ、頼み方を柔らかくしても、期限と目的は伝える。
言わなくても伝わると思って、期限を言えなかった失敗をしたことがあるからだ。
柔らかく頼むことと、曖昧に頼むことは、違う。
──本の中には、もう一つ、胸に残った話があった。
相手によって、態度を変えない
本の中で、嫌われる例として挙がっていたことがある。
人によって、態度を使い分けること。
目上の人には、へりくだる。
役職が下の人には、強く指示する。
昔の上司やリーダーに、ありがちな姿だ。
俺はこれまでも、それだけはやらないようにしてきた。
本を聴いて、改めてそう決めた。
相手の肩書きで、声の温度を変えない。
上にも下にも、同じ言葉で話す。
嫌われる理由は、たいてい小さい。
挨拶を返さない。
一方的に頼む。
相手によって、態度を変える。
どれも、された側は覚えている。
──だから俺は、小さいところから引き算をしている。
明日、ひとつだけ
明日の朝、相手の立場や役職に関係なく、自分から挨拶をする。
返ってこなくてもいい。
こちらから、先に。
好かれようとしなくていい。
嫌な思いをさせる理由を、一つ減らすだけでいい。
人との関係は、足すより先に、引くところから整う。
と、俺は思っている。
──今夜もまた、明日の最初の一言を決めてから、読書灯を消す。
同じ夜を戦う、戦友へ
📚 人と働くことに、少し疲れている人へ
『リーダーは話し方が9割』永松茂久
好かれるための話し方より先に、嫌われる言動をしないことを大事にする本だ。
俺はオーディオブックで聴いた。リーダー向けの本だけど、役職に関係なく、人と働くすべての人に効く一冊だと思う。
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──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。


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