自分のチームだけで、商談をしていた──『フットボールネーション』に教わった、22人で試合をつくるという考え方

深夜の机に置かれた読書灯と単行本と二色のマグネットが並ぶ小さな作戦盤 熱の処方箋

練習どおりに、うまく説明できた商談だった。

商品の特徴も、価格の手頃さも、伝えきった。
それでも、話はまとまらなかった。

理由を知ったのは、ずっと後のことだ。

社内の練習では、うまくできていた

取引先へのプレゼンは、いつも社内で準備していた。

どう説明すれば、伝わるか。
会社が考える訴求点を、どうすれば理解してもらえるか。
どこで身振りを入れて、強調するか。

練習を重ねるほど、うまくなっている気がした。

ただ、その練習の相手は、いつも自分と社内の人間だった。
見ていたのは、自分たちのチームの動きだけだった。

──相手が聞きたかったのは、そこじゃなかった。

決まらなかった理由

商品の特徴、メリット、価格の手頃さ。
伝えるべきことは、伝えたつもりだった。

それでも、納得してもらえない商談があった。

理由を知ったのは、取引を続ける中で、相手から直接聞いたときだ。

商品のことは分かる。
でも、自分たちのお客さんが使うところが想像できなかった。
お客さんはたくさんいる。
その中で、誰に勧めればいいのかも見えなかった。

だから、決められなかった。

俺は、目の前の相手だけを見ていた。
相手の後ろにいる人たちが、見えていなかった。

──そのとき、ある漫画の言葉を思い出した。

11人ではなく、22人

『フットボールネーション』に、こんな意味の言葉がある。

サッカーは、11人でやるものではない。
相手チームも含めた、22人でやるものだ。

自分のチームの動きだけを見ていても、試合はつくれない。
相手がどう動くかで、自分の一手の意味が変わる。

営業も、同じだった。

俺は、自分のチームだけで試合をしていた。
自社の訴求点と、自分の説明のうまさ。
見ていたのは、そこだけだった。

でも本当は、取引先も、その先にいるお客さんも、同じ試合の中にいた。
そこまで含めて、一つの商談だった。

以前、相手が本当に困っていることを見つける話を書いた。
今回の気づきは、その一歩先にあった。
相手の困りごとの、さらに向こう側だ。

──そう気づいてから、提案の中身を変えた。

相手の先にいる人の話をする

商品の良さを並べるのを、やめた。

代わりに話すようにしたのは、取引先のお客さんのことだ。
そのお客さんが、どう使えば、どんな良さがあるのか。
どんなお客さんなら、この商品の強みを一番活かして、生活に役立ててもらえるのか。

そこから話すようにすると、商談がまとまりやすくなった。

それ以上に変わったのは、相手の反応だった。

「うちのお客さんなら、こういう人の方が合うと思う」
「こういう使い方の方が、いいんじゃないか」

相手からも、意見が返ってくるようになった。

説明する側と、聞く側。
それだけだった商談が、一緒に考える場になった。

相手チームは、敵じゃなかった。
同じ試合をつくる、もう半分だった。

──22人で考えると、試合は深くなる。

明日、ひとつだけ

次の商談やプレゼンの準備で、一行だけ書いてから臨む。
「相手のお客さんは、これをどう使うか」

自社の訴求点を考える前に、
相手の先にいる一人を思い浮かべる。

仕事だけじゃない。
生活も、自分のチームだけでは回っていない。
家族の外にも、一緒に日々をつくっている人がいる。

試合は、自分たちだけでつくるものじゃない。
と、俺は思っている。

──今夜もまた、明日会う人の、その先にいる誰かを思い浮かべる。

同じ夜を戦う、戦友へ

もし今夜、自分のチームのことだけで頭がいっぱいだったあなたへ。
2冊、置いていきたい。

📖 自分のチームの外まで、見渡したい人へ
『フットボールネーション』大武ユキ

サッカーという競技を、体の使い方や考え方から捉え直していく物語だ。
当たり前だと思っていた見方が、ひっくり返される場面がいくつもある。

📚 お客さんの「その先」を考えたい人へ
『ジョブ理論』クレイトン・M・クリステンセン ほか

人は商品そのものではなく、片付けたい「用事」のために商品を選んでいる、という考え方を説いた本だ。
相手が何のためにそれを使うのか。提案の出発点を見直したい人の手がかりになるかもしれない。

このブログ「深夜の読書灯」では、
懸命に生きる父・事業主・サラリーマンが、漫画から学んだ「仕事術」や「生き方」を発信している。

同じ夜を過ごす戦友がいるなら、Xでも繋がりたい。

@shinyadokushoto

──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。

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