新しい商品を担当することになった時、俺には自信があった。
使う人への負担が少ない。
安心して、長く使い続けられる。
これまでの商品にはなかった強みだった。
これを伝えれば、きっと選んでもらえる。
そう信じて、得意先を回った。
──その「強み」が、相手にとっての一番ではなかったと知るのは、少し後のことだ。
売りたい夜ほど、強みばかり語っていた
商品には、いくつもの特徴があった。
その中で、俺が価値だと思ったのは一つ。
負担が少なく、安心して使い続けられること。
だから、そこばかりを推した。
資料も、説明の順番も、すべてそこに寄せた。
得意先の反応は、悪くなかった。
これなら、使う人も安心できる。
続けてもらいやすい。
そう言ってもらえた。
手応えはあった。
俺の見立ては、正しいと思っていた。
──でも、評価されることと、選ばれることは、同じではなかった。
相手が見ていたのは、別の場所だった
何度か通ううちに、得意先の言葉の端々から分かってきた。
相手が本当に知りたかったのは、負担の少なさじゃなかった。
結果が出るかどうか、だった。
考えてみれば、当たり前だ。
どれだけ安心して長く使えても、
そもそも結果が出なければ、使う意味がない。
負担の少なさは、結果が出た上での話だった。
俺は、その順番を逆にしていた。
そして、もう一つ気づいたことがある。
「結果」と一言で言っても、中身は一つじゃない。
数字として、目に見える改善がほしいのか。
使う人の毎日が、楽になることがほしいのか。
問題そのものを、根本から解決したいのか。
得意先によって、そして、その先で使う人によって、欲しい結果は違っていた。
──俺は、相手が何を価値と呼ぶのかを、一度も聞いていなかった。
『目に見えない価値の伝え方』が教えてくれたこと
今野有子の『目に見えない価値の伝え方』に、こんな考え方がある。
商品の特徴に、勝ち負けはない。
価値を決めるのは、売り手ではなく買い手だ。
売り手が思い込みで強みを推し、
ベネフィットを押し付けても、価値は伝わらない。
特徴を伝え、価値は相手に感じてもらう。
そうして初めて、選んでもらえる。
そんな意味のことが書かれていた。
読みながら、あの頃の自分を思い出した。
俺がやっていたのは、価値の押し付けだった。
「これが価値です」と、俺が決めて、相手に渡していた。
売りたい。
数字を上げたい。
その気持ちが強いほど、
相手が感じるはずの価値を、先回りして決めてしまう。
──売りたいという欲は、相手の目線を、いつの間にか消してしまう。
買い手の時は、分かっていたはずなのに
少し前に、靴の話を書いた。
見た目のいい靴を、脱いだ日──『The Art of Spending Money』に教わった、物の価値の決め方
高くて見た目のいい靴より、
歩きやすい普通の靴の方が、俺には価値があった。
物の価値は、自分の毎日に役立つかどうかで決まる。
買う側の俺は、それをちゃんと分かっていた。
なのに、売る側に回った途端、忘れていた。
相手にも、相手の毎日がある。
相手が何に価値を感じるかは、相手が決める。
買い手の時に当たり前だったことが、
売り手になると、見えなくなる。
──だから、決める前に、聞くことにした。
明日、ひとつだけ
商品の良さを紹介したら、
相手がどの結果を一番評価しているのかを、確かめる。
相手の価値観からずれないようにするため、一つだけ聞く。
「この中で、一番印象に残ったのはどれですか」
「ここだけは外せない、という結果はどこですか」
答えを聞いてから話す提案は、
同じ商品でも、まったく違う響き方をする。
──今夜もまた、明日会う人が何を大事にしているのかを一つ考えてから、読書灯を落とす。
まとめ:価値を決めるのは、相手だ
俺が価値だと思っていたものは、相手にとっての一番ではなかった。
商品の特徴に、勝ち負けはない。
価値を決めるのは、使う側だ。
売り手の仕事は、特徴を正直に置くところまで。
そして、相手が何を価値と呼ぶのかを、聞くこと。
売りたい夜ほど、一度立ち止まる。
語る前に、聞く。
それだけで、伝わり方は変わる。
同じ夜を戦う、戦友へ
📖 一生懸命伝えているのに、なぜか届かない人へ
『目に見えない価値の伝え方 顧客を感動させる提案の技術』今野有子
商品の価値は買い手が決める、という前提から、提案の組み立て方を見直す一冊だ。
このブログ「深夜の読書灯」では、
懸命に生きる父・事業主・サラリーマンが、書籍から学んだ「仕事術」や「生き方」を発信している。
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──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。


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