頑張る前に、決める──会社員の俺が事業を始めた時、努力では解けなかった迷い

深夜の机に置かれた読書灯と単行本と小さなコンパス 静の処方箋

本を読んでいて、手が止まった。

エリック・ジョーゲンソンの『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』。
投資家であり起業家でもある人物の言葉を集めた一冊だ。

その中に、こんな意味の言葉がある。

世の中では、努力が実際より重く見られている。
そして判断は、実際より軽く見られている。

努力を否定する言葉じゃない、と俺は受け取った。
ただ、心当たりがあった。

──会社でいくら頑張っても、変わらないものがあった。

努力では、変わらなかった3つのこと

会社員として、手は抜いてこなかったつもりだ。
朝から晩まで働いた頃のことは、以前の記事に書いた。

努力すれば、成果は出る。
評価も、ある程度はついてくる。

それでも、いくら頑張っても変わらないものが3つあった。

ひとつは、人間関係の範囲。
会社でどれだけ働いても、出会うのは会社の中の人だ。
それが悪いわけじゃない。ただ、広がらない。

ふたつめは、収入の形。
頑張りが、そのまま収入に映るわけじゃない。
柱は、一本のままだ。

みっつめが、一番大きかった。
役に立てる相手の種類だ。

会社員としての俺が役に立てるのは、会社の仕事の先にいる人に限られる。
どれだけ腕を磨いても、届く相手の範囲は変わらない。

これは、努力の量の問題じゃなかった。
同じ場所をどれだけ深く掘っても、掘っている場所は変わらない。

──変えるには、頑張り方ではなく、決めることが必要だった。

会社員だけで行くか、もう一つ持つか

選択肢は二つだった。

会社員一本で行くか。
自分の事業を持って、仕事の幅を広げるか。

すぐには決められなかった。
一番迷ったのは、時間だ。

会社員だけでも、十分に忙しい。
そこに事業を足せば、もっと忙しくなる。

家族との時間。
趣味の時間。
自分の時間。

全部なくなるんじゃないか。
その不安は、大きかった。

背中を押したのは、ある出会いだった。

同じ業界で働きながら、自分の事業も持っている人がいた。
会社員としての仕事も、事業も、どちらも頑張っていた。

この人にできているなら、俺にもできるんじゃないか。
そう思って、始めると決めた。

ただ、決めただけでは、時間の不安は消えない。

そこで気づいたことがある。
この迷いは、努力では解けない。

寝る時間を削って両方やる。
それは努力の答えだ。
でもそのやり方は、いずれ家族の時間を削ることになる。

必要だったのは、もう一つの判断だった。
何を足すかを決めるなら、何をやめるかも決める。

俺がやめたのは、惰性で続けていたことだ。

なんとなく続けていた業務。
だらだらと過ぎていた時間。
前回の記事に書いた飲み会の席も、そのひとつだった。

そうして空けた時間が、今は家族と事業の時間になっている。

──始める判断は、やめる判断とセットだった。

判断は、なぜ軽く見られるのか

努力は、見える。

遅くまで残っている姿。
こなした件数。
積み上げた時間。

周りからも、自分からも見える。
だから、途中でも評価される。

判断は、見えない。

決めた瞬間には、何も起きていない。
正しかったかどうかは、何年も経たないと分からない。

だから人は、努力のほうを信じやすい。
俺もそうだった。
頑張っている間は、前に進んでいる気がするからだ。

誤解したくないことがある。
努力は大事だ。
事業を続けているのは、結局のところ毎日の努力でしかない。

ただ、順番がある。
どこで頑張るかを決めるのが先で、頑張るのはその後だ。

俺の判断が正しかったかどうかは、まだ分からない。
楽になったわけでもない。
使える時間は、今も限られている。

それでも、会社でいくら頑張っても届かなかった相手に、今は届くことがある。
それは努力ではなく、決めたことで変わったものだ。

──じゃあ、明日の俺は何を決めるか。

明日、俺がやるひとつのこと

足すものを決めたら、やめるものも決める。

時間は増えない。
足すだけの判断は、いずれ家族か自分の時間を削る。

だから、新しく始めたいことをひとつ書いたら、
その横に、やめることをひとつ書く。

やめるものは、大きくなくていい。
俺の場合は、なんとなく続けていた業務からだった。

まとめ:頑張る前に、決める

掘る場所を間違えたまま掘り続ければ、深い穴ができるだけだ。
どこを掘るかは、努力では決まらない。

決めるのは、今でも怖い。

事業では、決めた結果が全部自分に返ってくる。
会社員だけだった頃より、ひとつの判断が重い。

それでも俺は、決めてから頑張るほうを選びたい。


同じ夜を戦う、戦友へ

今夜は1冊、置いていきたい。

📚 頑張る方向を、一度立ち止まって考えたい人へ
『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』エリック・ジョーゲンソン

富と幸福についての考え方を、短い言葉で集めた本だ。
どこから開いても読める。


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