つまらないと言う前に、見えていなかったもの──『アオアシ ブラザーフット』と、先輩の謝罪

深夜の机に置かれた読書灯と漫画の単行本と使い込まれた革の手帳 熱の処方箋

会社がつまらない。
そう思っていた時期がある。

もっと訪問軒数を増やせ。
もっと効率的に動け。

当時の俺には、会社からの指示が、中身のない言葉に聞こえていた。
商品も、思うように売れない。
やる気は、少しずつ下がっていった。

──得意先を怒らせてしまったのは、そんな時だった。

つまらないと思っていた俺が、起こしたトラブル

詳しくは書けない。
ただ、俺の落ち度だった。

得意先を怒らせ、取引が切れかけた。
謝っても、届かない。
自分ではもう、どうにもできなかった。

その時、動いてくれたのが前任の先輩だった。
すでに担当を離れていた人だ。

その人が、得意先に頭を下げてくれた。

俺も、その場にいた。
できたのは、隣で一緒に頭を下げることだけだった。

取引は、つながった。

俺の謝罪では動かなかったものが、先輩の謝罪で動いた。
違ったのは、その人が得意先と積み重ねてきた年月だ。

──俺はそれまで、その年月が見えていなかった。

見えていないのなら

この出来事を思い出したのは、漫画を読んでいた時だ。
小林有吾の『アオアシ ブラザーフット』。

ある人物が、クラブのスタジアムを「つまらない」と言い捨てる場面がある。
それを聞いた主人公は、別のものを見ていた。

悔しそうに帰っていく観客。
裏方としてクラブを支える人たち。
相手の背中が見えなくなるまで、頭を下げ続ける営業スタッフ。

それが見えていないのなら、つまらないと思うのは、

「きみ自身のせいだ」
(小林有吾『アオアシ ブラザーフット』より)

主人公は、そう返す。

頭を下げ続ける営業スタッフ。
その姿で、あの日、隣で頭を下げていた先輩を思い出した。

会社がつまらないと思っていた頃の俺に、見えていなかったもの。
それは、会社を支えてきた先輩たちだった。

──つまらなかったのは、会社じゃない。見えていなかった俺のほうだ。

先輩が差し出したのは、言葉だけじゃなかった

『7つの習慣』に、信頼口座という考え方がある。

人との関係を、銀行の口座にたとえる。
誠実な行動を重ねるたびに残高が増え、裏切るたびに減っていく。

あの時、先輩が得意先に差し出したのは、謝罪の言葉だけじゃなかった。
何年もかけて積み上げた残高だ。
それを、俺の失敗のために引き出してくれた。

思い返せば、あの時だけじゃない。

担当を引き継いだ頃、得意先との話が弾まずに困ったことがある。
助けてくれたのは、歴代の担当者が残していた記録だった。

相手がどんな人なのか。
何を大事にしているのか。

次に担当する誰かのために、書き残してあった。

俺が毎日歩いていた道は、誰かが先に踏み固めてくれた道だった。

断っておくと、会社員という立場に限界があるのは事実だ。
そのことは前回の記事に書いた。

でも、限界があることと、つまらないことは別の話だ。
俺はその二つを、一緒にしていた。

──じゃあ俺は、次の誰かに何を残せているか。

明日、俺がやるひとつのこと

今日の面談内容や商談記録を、次の担当者に託すつもりで書き残す。

繋がりは、自分の代で使い切るものじゃない。
先輩たちから受け取ったものを、少しでも強くして次に渡す。

俺が助けられたのは、誰かがそれをやってくれていたからだ。

まとめ:つまらないと言う前に

会社からの指示が、今も全部腑に落ちるわけじゃない。

それでも、つまらないと言う前に、見るようにしている。
この仕事を、誰が支えてきたのか。

いつか誰かが困った時、俺の残したものが、少しでも役に立てばいい。


同じ夜を戦う、戦友へ

今夜も2冊、置いていきたい。

📖 目の前の仕事が、つまらなく見えている人へ
『アオアシ ブラザーフット』小林有吾

サッカーの漫画だ。
でも描かれているのは、ピッチの外で支える人たちでもある。

📚 信頼がどう積み上がるのかを、言葉で整理したい人へ
『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー

本文で触れた信頼口座は、この本に出てくる考え方だ。


このブログ「深夜の読書灯」では、
懸命に生きる父・事業主・サラリーマンが、漫画から学んだ「仕事術」や「生き方」を発信している。

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──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。

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