俺がいなくても、会社は回っていた──『DAYS』柄本つくしに学ぶ、それでも必死でやる理由

深夜の机に置かれた読書灯とサッカーボールと漫画の単行本 熱の処方箋

異動から数ヶ月後、
前の担当エリアの数字を、ふと目にした。

俺が何年もかけて信頼を積んだ得意先。
その売上は──下がっていなかった。

後任は、ちゃんとやっている。
会社としては、何の問題もない。
むしろ、いいことだ。

分かっている。
分かっているのに、その夜は妙に静かだった。

俺がいなくても、回っている。

あんなに必死で通ったのに。
あんなに頭を下げて、積み上げたのに。

自分の代わりは、いた。

──そんな夜に効く漫画がある。
サッカー漫画『DAYS』だ。

才能のない主人公が、
「自分がいなくてもチームは回る」と知った上で、
それでも必死に走る理由の話。

「いなくても回る」の先にあるものを、
今日は書こうと思う。

二度、突きつけられた

うちの部署は、転勤が多い。

数年かけて得意先との関係を作っても、
辞令一枚で、担当は変わる。

異動のたびに、引き継ぎ資料を作り、
後任を連れて挨拶に回り、頭を下げる。

「後のことは、彼に任せますので」

そうやって離れた得意先の数字が、
下がっていなかった。

もちろん、数字は表面でしかない。
細かいトラブルがなかったか、
得意先が本当はどう感じているか、
全部が見えているわけじゃない。

でも、少なくとも会社から見える景色として、
俺の穴は、きれいに埋まっていた。

二度目は、育児休暇だった。

子どもが生まれて、半年間、現場を離れた。
その間は、契約社員の方が担当を引き継いでくれた。

復帰して、真っ先に数字を確認した。

大きなトラブルもなく、売上は続いていた。

ありがたい話だ。
安心して休めたのは、その人のおかげだ。

でも、正直に書く。

安堵と一緒に、
小さな寂しさみたいなものが、確かにあった。

半年いなくても、会社は回る。
売上は続く。得意先も困らない。

「いなくてもいい」わけじゃない。
それは頭では分かっている。

でも、「いなくては困る」わけでもない。

その現実を、転勤と育児休暇で、
二度、突きつけられた形だった。

──俺は、何のために必死にやってるんだろう。

そんな問いが、頭の隅に住み着いた。

考えてみれば、営業は最初から「求められていない」

その問いを抱えたまま働くうちに、
ふと、別のことに気づいた。

そもそも俺の仕事は、
「求められる」ところから始まっていない。

営業という仕事は、
基本的に、面識のない相手のところへ
こちらから出向くところから始まる。

「ぜひ来てください」と
呼ばれることは、ほとんどない。

むしろ、営業が来ると聞いて
喜ぶお客さんの方が少ない。

アポの電話は警戒され、
訪問すれば「忙しいんだけど」の空気が流れる。

つまり、俺たちは最初から、
求められていない側なんだ。

そこから、相手の話を聞き、
ニーズを掘り起こし、気づきを届けて、
ようやく「会ってよかった」に変えていく。

求められていない状態から、
必要とされる状態へ。

その距離を埋めることが、
営業という仕事そのものだった。

だとしたら、だ。

「いなくても回る」も
「求められていない」も、
嘆くようなことじゃないのかもしれない。

それは挫折じゃなくて、
この仕事の、ただの初期条件なんじゃないか。

──その考えを、はっきり言葉にしてくれたのが、
あのサッカー漫画だった。

『DAYS』のつくしが教えてくれたこと

『DAYS』(安田剛士)というサッカー漫画がある。

主人公の柄本つくしは、
高校からサッカーを始めた、まったくの素人だ。

入部したサッカー部は全国レベルの強豪校。
周りは、天才や実力者だらけ。

技術もセンスも、圧倒的に足りない。
取り柄は、必死に走ることだけ。

そのつくしが、あるとき
こんな意味のことを言う。

サッカーが死ぬほど楽しい。
だから、必死でしがみついていないと、
一瞬でなくなってしまう。

このチームは、自分が初めて
「いたい」と思えた場所だから。

自分は、誰かに求められているわけじゃない。
明日、自分がいなくても、チームは回る。

だからこそ、ギリギリの自分は
必死でやるしかないんだ、と。

初めて読んだ時、
胸の奥を掴まれた気がした。

「いなくても回る」を、
この主人公は、とっくに受け入れている。

しかも、それを絶望の結論にしていない。

いなくても回る。
求められてもいない。

だから、辞めるんじゃない。
だから、必死でやる。

順番が、逆なんだ。

必要とされているから頑張るんじゃない。
必死でやるから、少しずつ必要とされていく。

「いなくても回る」は、
自分の価値の否定じゃなかった。

今日も必死でやる理由、
そのものだった。

俺の答え──「ありがとう」のために、必死でやる

つくしには、しがみつく理由があった。
死ぬほど楽しいから。
初めて「いたい」と思えた場所だから。

じゃあ、俺は?

なぜ「いなくても回る」と知った後も、
この仕事にしがみついているのか。

考えて、すぐに答えが出た。

「ありがとう」だ。

困っていた得意先の悩みを、一緒に解いて、
「あなたに相談してよかった」と言われた時。

こちらの気づきがきっかけで状況が変わって、
「ありがとう」と頭を下げられた時。

あの瞬間のために、
俺はこの仕事をやっている。

会社の売上は、俺がいなくても続く。
担当の穴は、誰かが埋める。

でも、あの日あの得意先が言ってくれた
「ありがとう」は、
俺が必死にやったから生まれたものだ。

代わりの誰かでも、売上は作れたかもしれない。
でも、あの瞬間のあの信頼は、
あの時の俺にしか作れなかった。

そう思えるようになってから、
「いなくても回る」は怖くなくなった。

会社にとっての代わりは、いる。
それでいい。それが健全な組織だ。

俺が必死になる理由は、
会社に必要とされるためじゃなく、
目の前の誰かに「ありがとう」と
言ってもらうためだった。

センスのある後輩が来ても、
営業の上手い競合とぶつかっても、
やることは変わらない。

今日も目の前の相手に、必死で向き合う。

必要とされることは、前提じゃない。
毎日、自分で更新していくものだ。

明日、「いなくても回る」と戦うために

じゃあ、明日から何をするか。

「いなくても回る」に沈んだ夜のための、
3つの処方箋を書いておく。

① 「会社の数字」と「自分の価値」を、分けて考える

売上は、会社のものだ。
担当が変われば、引き継がれていく。

でも、得意先との間に生まれた信頼、
かけてもらった言葉、救われた瞬間。

それは引き継ぎ資料に載らない、自分のものだ。

数字で自分の価値を測ると、
代わりはいくらでもいる。

でも「ありがとう」の記憶で測れば、
あの瞬間の自分に、代わりはいない。

② 自分が「しがみつきたい理由」を、一つ言葉にする

義務感だけの必死さは、続かない。
恐怖からの必死さは、いつか折れる。

続くのは、
「これがあるからやってる」が見えている必死さだ。

俺の場合は「ありがとう」だった。

あなたの場合は、何だろう。
給料でも、家族でも、成長でも、誰かの顔でもいい。

一つ言葉になっていれば、
沈んだ夜の立て直しが、まるで違ってくる。

③ 「求められてから動く」をやめる

求められるのを待っていたら、
営業は一歩も動けない。

たぶん、営業以外の仕事も同じだ。

指名されるのを待つんじゃなく、
こちらから、相手の役に立ちに行く。

必死でやるから、少しずつ必要とされる。
順番は、いつもこっちだ。

明日、誰にも呼ばれていなくても、
自分から動く。

それが「いなくても回る」世界での、
唯一の戦い方だと思う。

まとめ:いなくても回る。だから、必死でやる

転勤しても、育休を取っても、会社は回った。
俺の穴は、きれいに埋まった。

その事実は、今も少しだけ寂しい。

でも、あの素人のサッカー少年が教えてくれた。

いなくても回ることと、
必死でやることは、矛盾しない。

むしろ、いなくても回るからこそ、
今日ここにいる理由は、
自分の必死さで作るしかない。

会社に必要とされるためじゃない。
目の前の誰かの「ありがとう」のために。

──今夜、「自分の代わりはいくらでもいる」と
沈んでいるあなたへ。

代わりがいるのは、役割の話だ。
あなたが誰かと積み上げた時間には、
最初から代わりなんていない。

明日もまた、必死でやるか。
それしかないなら、それでいこう。

同じ夜を戦う、戦友へ

今夜も2冊、置いていきたい。

📖 つくしの「必死」を最初から見届けたい人へ
『DAYS』安田剛士

素人が強豪校で走り続けるサッカー漫画。
才能の話じゃなく、しがみつく理由の話として読んでほしい。

📚 自分の「なぜやるのか」を言葉にしたい人へ
『WHYから始めよ!』サイモン・シネック

人を動かすのは「何を」ではなく「なぜ」だ、という
世界的ベストセラー。

この記事で書いた「しがみつく理由を言葉にする」を
突き詰めたい人の、次の一冊として。


このブログ「深夜の読書灯」では、
懸命に生きる父・事業主・サラリーマンが、漫画から学んだ「仕事術」や「生き方」を発信している。

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@shinyadokushoto

──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。

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