契約が取れなかった。
何度説明しても、取れなかった。
若手の頃の話だ。
あの頃の俺は、原因をはっきり分かっているつもりだった。
会社の指示が悪い。
今あの頃を思い返すと、重なる言葉がある。
空知英秋の『銀魂』に出てくる言葉だ。
転んだ原因を足元の石に押しつけても、状況は何ひとつ良くならない。
そんな意味の言葉だ。
──あの頃の俺は、ずっと石のせいにしていた。
会社の指示通りに動けば、売れると思っていた
新商品が出た時のことだ。
会社からは、得意先への説明の型が示されていた。
若かった俺は、それをそのまま話した。
この通りに言えば、相手は分かってくれる。
契約は取れる。
そう思っていた。
周りの先輩たちも、同じ型で商談を進めていた。
実際に、契約も取れていた。
だから、間違いないと思っていた。
でも、俺は取れなかった。
──そこで俺が選んだのは、一番楽な説明だった。
石のせいにしていた間、俺がやらなかったこと
取れないと分かった時、俺がやったことは一つだった。
同じ説明を、繰り返した。
回数を重ねれば、そのうち伝わる。
そう思っていた。
説明の中身を疑うことは、しなかった。
先輩に聞くことも、しなかった。
理由は単純だ。
自分の能力は、低くないと思っていた。
悪いのは俺じゃない。指示のほうだ。
そう考えている間は、楽だった。
直すべきものが、自分の外にあるからだ。
ただ、その間、俺は一歩も進んでいなかった。
──つまずいた石に文句を言っていても、何も変わらなかった。
でも先輩は、俺と同じ石にはつまずいていなかった
ある飲み会で、俺は先輩に愚痴をこぼした。
いくらやっても、契約が取れない。
会社の指示が悪いんじゃないか。
先輩の返事は、短かった。
「他責にするな」
そして、教えてくれた。
先輩たちは、型をそのまま話していたわけじゃなかった。
相手によって、話す順番を変える。
強く言うところと、流すところを変える。
目の前の相手が何を大事にしているかを見て、組み立て直していた。
相手を見て話すことについては、以前の記事に書いた。
ここで書きたいのは、その手前の話だ。
石は、全員の足元にあった。
先輩は、その石の避け方を考えていた。
転んだのは、俺だけだった。
しかも俺は、会社のせいにしていない人に向かって、会社のせいだと話していた。
今思えば、ずいぶん恥ずかしい話だ。
──石は、最初から言い訳にならなかった。
なぜ俺は、石のせいにしたのか
心理学に、自己奉仕バイアスという言葉がある。
うまくいった時は、自分の力だと考える。
うまくいかなかった時は、外の要因のせいだと考える。
人には、そういう傾向があるという。
あの頃の俺は、そのままだった。
能力は悪くない。指示が悪い。
これは、俺が特別に弱かったという話じゃない。
誰でもそうなりやすい、という話だ。
それに、石が本当に悪い時だってあるだろう。
会社の指示が、いつも正しいとは限らない。
ただ、石が悪いと証明できても、転んだ俺は立ち上がれない。
あの言葉が言っているのは、たぶんそういうことだ。
──じゃあ、次に転んだ時、俺はどうするか。
明日、俺がやる3つのこと
① 回数を増やす前に、中身を疑う
同じことを繰り返すのは、努力に見える。
でもあの頃の俺のそれは、考えないための作業だった。
② 「〜のせいだ」と思ったら、同じ条件でうまくいっている人を探す
同じ石につまずいていない人がいるなら、原因は石じゃない。
俺の場合、その人は手の届くところにいた。
③ うまくいっている人に、相談する
愚痴からは、建設的な答えは出てこない。
あの夜の俺は、愚痴をこぼした相手に、たまたま救われただけだ。
次は、たまたまを待たない。
原因を自分の側に置いて、解決の方法を自分から探しに行く。
まとめ:石は、動かない
転んだ時、石を責めたくなる。
たぶんこれからも、俺はそうなる。
でも、石は動かない。
動けるのは、転んだ俺のほうだけだ。
同じ夜を戦う、戦友へ
今夜も2冊、置いていきたい。
📖 転んだ後の立ち上がり方を、笑いながら考えたい人へ
『銀魂』空知英秋
ふざけた漫画だ。
なのに時々、こういう言葉が混ざっている。
📚 失敗を自分の外に置いてしまう理由を知りたい人へ
『失敗の科学』マシュー・サイド
失敗から学べる人と学べない人は、何が違うのか。
それを扱った一冊だ。
このブログ「深夜の読書灯」では、
懸命に生きる父・事業主・サラリーマンが、漫画から学んだ「仕事術」や「生き方」を発信している。
同じ夜を過ごす戦友がいるなら、Xでも繋がりたい。
──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。


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