若い頃、6点か7点の準備で、プレゼンに出たことがある。
10点には届いていない。
自分でも、分かっていた。
それでも、これくらいでいいかと思って、相手の前に立った。
6点のまま、出てしまった日
資料は、途中で手を止めていた。
話す順番も、詰め切れていなかった。
本番が始まると、すぐに分かった。
言いたいことが、伝わらない。
説明が、相手の理解につながっていかない。
準備で埋めなかった穴が、そのまま話の穴になっていた。
──終わったあとに残ったのは、悔しさよりも、申し訳なさだった。
時間をもらった相手に、申し訳なかった
相手は、忙しい中で時間を割いてくれていた。
その時間で、俺は言いたいことを言えなかった。
相手も、知りたいことを知れなかった。
どちらにとっても、得のない時間だった。
6点で出した仕事は、6点の結果で終わるんじゃない。
相手の時間まで、無駄にしてしまう。
──それから何年もたって、ある漫画の場面に、この日のことを思い出した。
半人前でも、満点をつける
『中華一番!』に、料理人の資格試験の場面がある。
最後の課題は、自分の料理に、10点満点で点数をつけること。
一人は、自分を高く見せるために満点を言った。
一人は、9点をつけた。
主人公のマオは、自分はまだ半人前かもしれないと認めたうえで、こう言い切る。
「満点以外なんてつけられません」
(小川悦司『中華一番!』より)
自分の舌と技術と心の限界で作り、最高だと信じて出す料理だから。
そういう意味の言葉だ。
同じ満点でも、中身がまったく違う。
見せるための10点と、出し切ったうえでの10点。
マオの10点は、完璧という意味じゃなかった。
今の自分の限界まで出し切った、という意味だった。
──あの日の俺は、6点だと分かっていながら、出していた。
今の自分の10点で出す
それ以来、決めていることがある。
面談の資料も、プレゼンも、今の時点での10点で出す。
いつでも完璧なものが作れるわけじゃない。
時間は限られているし、環境も、知識も、その時の自分の分しかない。
だから、俺の10点は、その中での10点だ。
せめて、誤字脱字はない。
前回指摘されたところは、必ず直してある。
今の自分に分かることは、全部入れてある。
そこまでやって、出す前に自分に聞く。
これに何点をつけるか、と。
満点と言えなければ、まだ出さない。
もう一つだけ、詰める。
自分で満点をつけてから、相手の評価を受ける。
その順番だけは、崩さないようにしている。
以前、準備を後回しにしない癖の話を書いた。
あれは、いつ準備を始めるかの話だった。
今回は、その準備を、何点で終えるかの話だ。
──最初に点数をつけるのは、相手じゃない。出す前の、自分だ。
明日、ひとつだけ
次に出す資料やプレゼンを、出す前にもう一度だけ見直す。
誤字脱字はないか。
前回言われたところは、直してあるか。
その二つを確かめてから、自分で点数をつける。
限られた時間の中で、やれることをやり切ったなら、それは満点でいい。
満点は、才能でつけるものじゃない。
覚悟でつけるものだ。
と、俺は思っている。
──今夜もまた、明日の資料に、自分で点数をつけてから読書灯を消す。
同じ夜を戦う、戦友へ
📖 自分の仕事に、誇りを持ちたい人へ
『中華一番!』小川悦司
料理人を目指す少年が、腕を磨きながら数々の勝負に挑んでいく物語だ。
まだ未熟でも、自分の仕事に誇りを持つ姿勢が、何度も描かれている。
このブログ「深夜の読書灯」では、
懸命に生きる父・事業主・サラリーマンが、漫画から学んだ「仕事術」や「生き方」を発信している。
同じ夜を過ごす戦友がいるなら、Xでも繋がりたい。
──今夜もまた、どこかで一つ、読書灯が灯る。


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